読了

氏家幹人『江戸藩邸物語』

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氏家幹人『江戸藩邸物語 戦場から街角へ』(中公新書883)、

中央公論社、1991年10月7版(1988年6月初版)

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氏家(うじいえ)氏の初期の著作。

個人的に、同氏の著作は昔から好きなほうなので

勉強させて頂いております。

長らく続いた戦乱の世が終わって大安の世に入ったものの、

前代の習慣・思想がそう簡単に抜け切るはずも無く、

そのような武士たちが如何に生きていたのか、

如何に考え如何に振る舞っていたのか、

といったことを考察されています。

この「戦乱の世」に、国内だけでなく

いわゆる文禄・慶長の役(壬辰・丁酉倭乱)も

含まれるでしょう。

16世紀末まで戦いに明け暮れた日本の武士たち。

そこで築かれた長年の習慣・思想は、

大安の世には時に邪魔者・難儀な存在だったようです。

戦乱から太平への移行期に見られる武士(および他の階層も含む)の

困った顔が目に浮かぶような、興味深い一冊です。

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北島万次『秀吉の朝鮮侵略』

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北島万次『秀吉の朝鮮侵略』(日本史リブレット34)、

山川出版社、2002年7月初版

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著者は、文禄・慶長の役を中心に同時代を

研究されている大家、北島万次氏。

山川出版社さんが出しておられる

二つのリブレットシリーズの一翼を担う一冊です。

概ね100ページ程度の分量、しかも文字が大きく

注もところどころ付けられているので

「ちょっと本を読みたいけど疲れて

ハードカバーに手が出ないとき」にも適した分量です。

しかし、このようなコンパクトな分量であるにも拘らず、

約7年にわたる文禄・慶長の役(壬辰・丁酉倭乱)について

興味深く読み続けられるよう纏められています。

さすがに碩学…。

日韓の資料をどれほど読み込まれているかは

参考文献を見れば(見なくとも内容を読めば)一目瞭然ですが、

しかし本文ではあくまでも読みやすくするため、

これらが表にでしゃばることはありません。

ですので、当戦争を大きな流れで知るためにも

とても役立つ一冊です。

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中里紀元『秀吉の朝鮮侵攻と民衆・文禄の役』

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中里紀元『秀吉の朝鮮侵攻と民衆・文禄の役(壬辰倭乱)

―日本民衆の苦悩と朝鮮民衆の抵抗』(上下)、

文献出版、1993年

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著者は陶芸家、中里紀元氏。

あとがきによりますと

「文禄、慶長の役で…連行されてきた朝鮮陶工又七」

の御子孫とのこと。

このあたりに、本書を執筆された動機の一端を

伺うことができます。

渉猟された資料の豊富さは引用文献を見れば

とてもよく分かります。

下巻には関連年表のほか、

下瀬七兵衛の「朝鮮陣留書」が活字化して

付されています。

愚生が面白く読むことのできたのは第12章と第13章。

副題にある「日本民衆の苦悩と朝鮮民衆の抵抗」を見て

一読しました。

全体として、副題を以て主軸を提示するのであれば

もう少しこの部分に焦点を絞った叙述が必要なのではと。

自分自身、まだまだですので他の方のことを

とやかく言えませんが、

この部分に置かれた力点が些か弱く感じられたのは否めず。

あと、朝鮮側の資料が訳本に多くを依るというのは

専攻柄、どうしても気になるところです。。。

最後に、スミマセン…アフィリエイトに出てきません…。

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氏家幹人『かたき討ち』

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氏家幹人『かたき討ち 復讐の作法』(中公新書1883)、

中央公論新社、2007年2月

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『武士道とエロス』などで著名な、氏家幹人氏の一冊。

かたき討ちと見ることのできる諸種の行為から、

近世日本の社会の姿を描き出そうとされております。

いわゆる敵討ち、つまり身内の誰かが殺されて、

その報復のために相手を殺す、というものから

「うわなり打」先妻が後妻へ行なう報復行為や

「妻敵討」不倫男女のうちの女の夫がこの両者へ報復、

といったものも含め、「報復」という行為の裏側に潜むものを

見ようとされているのか。

最後の章を「敵討の原像」と題してその原理を

「非命の死こそ自然な死であるとする死生観」(p264)と

指摘されていることを鑑みると、

やはり基本は武士の報復行為についての考察に集約されるのか、

などなどつらつらと考えさせてくれる一冊でもあります。

個人的には、こういうアプローチ、好きなほうです。

ゆえに楽しく読ませて頂きました。

かたき討ち 復讐の作法  /氏家幹人/著 [本] かたき討ち 復讐の作法 /氏家幹人/著 [本]
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野崎充彦編訳注『青邱野談』

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野崎充彦編訳注『青邱野談 李朝世俗譚』、

(平凡社東洋文庫670)、平凡社、2000年5月初版

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「儒教の国」と言われる韓国の前身、

朝鮮王朝(李朝)の社会における、

ステレオタイプのイメージとは異なる姿を

示してくれる野談の代表作『青邱野談』。

本書はその編訳注。

著者は、斯界にて活動された当初から

野談の研究を重ね続けた第一人者です。

同書に収められた作品数は42篇。

「全体の二割にも満たない分量」なのだそうです。

儒教国家「朝鮮」を成立させるために、

自身が儒教の描く人物像・立居振舞に適合するように、

当時の知識人階層(士大夫)たちが

情と規範との間で如何に考え、動き、適応させようとしたのか、

また、自身らも上のような状況に在るにも拘らず

為政者や知識人階層が喧しく規範の徹底を唱える中、

その収奪の対象であった庶民たちのありよう、

などなど、物語として素直に楽しむも良く、

それ以上の使途に用いられるのも良く。

一話当たりが短いので、就寝前の一冊としてもオススメです。

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加地伸行『沈黙の宗教―儒教』

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加地伸行『沈黙の宗教―儒教』(ちくまライブラリー99)、

筑摩書房、1992年

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新年初読了です。

一昨日くらいには読み終えてましたが、

原稿を書いていたもので

こちらに手が回りませんでしたf(^_^;)

さて、著者は言わずと知れた碩学泰斗、加地先生です。

直接お会いしたことはありませんが、

儒教学・中国学および関連学問を専攻する方なら

大抵の人間は御芳名を耳にしたことのある、

そんな方ではないかと思います。

今回の本は、以前読んでいるのですが、

久々に読み直してみました。

実際に面白いですし、

勉強になることは多いのですけど、

それ以上に、原稿に書き疲れたときに

息抜きで読んでいた中で励まされました文言が。

以下に引用致します。

「伝記や資料を平板に並べるだけでは〈事実〉は明らかにならない。

そこに解釈が加わってこそ、はじめて〈事実〉が現れるのである。

/その解釈もその場限りの思い付きではなくて、全体を一貫する、

その人独自の見かたがなくてはなるまい。

もっとも、主として個別研究を行なう若いときは、

一本一本の木は見えても森全体は見えないから、

(後略)」(p295。「/」は改行を表す。赤文字は引用者)

研究にたずさわる場合、

きっとこうしたことは序盤で理解するもの思います。

ただ、論文をこれまで何本か書いていく中で、

いつも「自分の視野の狭さ」といいますか、

「知的土台となる教養の薄さ」といいますか、

はたまた「悪い意味での分析癖」といいますか、

こういうのを打開すべく論文を書こうとして

書いては消し、書いては消し、…、を繰り返していると

2008年が終わっていました。

もしかすると断章取義的にピックアップして

勝手に喜んでいるだけなのかも知れませんが、

今回の原稿でこれを読んで励まされたのは

紛れもない事実です。

今年は、このフレーズで頑張れそうな気分です。

ある種、お年玉かも。

Book 沈黙の宗教―儒教 (ちくまライブラリー)

著者:加地 伸行
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小川環樹等訳『史記列伝』第1巻

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司馬遷(小川環樹・今鷹真・福島吉彦訳)『史記列伝』第1巻

(岩波文庫、青214-1)、岩波書店、

1987年2月18刷(1975年6月1刷)

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何で今更基礎を…と思われてしまいそうです。

それも全5冊あるのになぜ1巻のみ…とも言われるかも。

最近、原典資料に割く時間がかなり増えて、

本を読む時間が減っています。

こんなことではダメです…我ながら(*_*)

まぁ、論文は読んでるといえ、

論文をここに挙げるのもどうかと思いますので、

そうなると一部分とは言え挙げざるを得ず。

というわけで、今回は、横山光輝先生によって漫画化もしている、

趙有名な『史記』の訳本でございます。

その筋でも時に引用されている訳本で、

この第1巻に納められているのは

全て小川環樹先生の訳された部分です。

※「はじめに」で訳者分担が記されている※

何も言うことが無いと言いますか、

変な意味でなくて、流石といいますか、

「これだけ訳されているのに愚生ごときが何をか語らん」

としか言いようがないのです。

普通に読物として面白く読めますし、

訳注も参照して「なお、訳文は同書による」で

使える水準なわけですから。

単に「どれが自分にとって、

研究の面で或いは楽しく読むとして面白い内容か」と

甚だ私的な観点で述べるに留まりますが、

「魏公子列伝」と「春申君列伝」ですかね。

他も面白いですけど、愚生にはこの二つということで。

続きも楽しみです。

Book 史記列伝 1 (1) (岩波文庫 青 214-1)

著者:司馬 遷
販売元:岩波書店
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脇田晴子『中世に生きる女たち』

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脇田晴子『中世に生きる女たち』(岩波新書377)、

岩波書店、1995年2月初刷

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日本中世史の本でございます。

序章で、中世への橋渡しとなる時期、平安時代について

概説をされた上、本論で中世の女性に関する叙述が続きます。

大まかに、公家・武家・尼僧・庶民、という区分で

そのまま章立てされています。

結論で著者自ら述べておられるように、

中世女性史の視点として「家」という枠組み・概念・制度の存在を用い、

妻問婚から嫁取婚へと婚姻形態が変わることによって

「家」の存在形態も変わり、女性の位置づけもまた変わっていった。

その流れの中で、公家・武家、尼僧、庶民、

それぞれもまた各自のありようが形成されていった、

と、このようなところでしょうか。

愚生には終章(=結論に代わる)部分が、

思想史にも関連する内容であったため、参考にできたかと。

あと、中世といえば朝鮮では概ね高麗時代・朝鮮前期ですから、

対比するという意味では総じて学ぶ所が多かったですね。

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池上俊一『魔女と聖女』

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池上俊一『魔女と聖女 ヨーロッパ中・近世の女たち』、

(講談社現代新書1125)、講談社、1992年11月1刷

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二つのイメージ、魔女と聖女を切り口として

欧州中近世の女性史を著した一冊。

あとがきでは、

「「魔性」と「聖性」をキーワードにして、

ヨーロッパ中世・近世の女性史を

みとおしてみよう」と述べられております。

新書でありながら勉強させていただくことの

多かった一冊です。

魔女あるいは聖女と指称される所以となった

民間医療などの口伝の知識が

後に女性知識人を生み出す一因となったように

理解したのですが、

さながら朝鮮における儒俗二元文化論を彷彿とさせます。

家庭内において男女の知的交渉はどのように在ったのか、

など次の展望への興味を駆り立てる一冊でもあります。

敢えて申し上げれば、

見開き2頁程度、邦文・邦訳書で良いので

参考文献も御紹介下さればなお嬉しかったのですが、

贅沢なことを言わず、自分で探せということかも知れません。

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中野清『中野の[ガッツ漢文]』1

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中野清『中野の[ガッツ漢文]』1(受験面白参考書)、

大和書房、1992年16刷(1987年1刷)

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まず、巻次は①や②(まる1、まる2)で表記されていますが、

機種依存文字を避けるため、タイトルでは用いなかったことを

あらかじめ申し添えます。

これと同2、更に問題集という形で全3巻だったようですが、

1996年に情況出版さんから改訂新版が刊行されている模様。

この改訂新版は全12章ということですから、

ここで取り上げる1巻の全7章と2巻を合本したものかと、

現物を未見ながら推測しております。

文体は終始読みやすい形で貫かれており、

以前愚見を申し上げた二畳庵主人『漢文法基礎』と

当たりは良く似ています。

もっともボリュームからもそうであるように、

『漢文法基礎』に比べカバーする密度・範囲に

及ばないのは仕方ありません。

内容から見ての違いは、

『漢文法基礎』が漢学者の視点から解説されているのに対し、

同書は現代中国語の文法を用いて説明されている点。

「前者が直球、後者が変化球」と例えると

語弊が生じるかもしれませんが、

あくまでも愚見として付言いたします。

どちらもとっつきやすい文体で書かれているので

読み比べるとより面白いでしょうし、

同書は片手で楽々持てるサイズの大きさですので

電車で読むにはこちらがより快適です。

いずれ、改訂新版も読んでみたいものですね。

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吉川幸次郎『漢文の話』

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吉川幸次郎『漢文の話』(ちくま文庫430)、

筑摩書房、1989年4刷(1986年初刷)

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1969年に同社から刊行されたものの文庫化版。

著者は当該分野では名高い吉川幸次郎先生。

漢文法や構造に関する記述もあるのですが、

どちらかというと、それよりもむしろ

読者をして漢文の世界を楽しませるための

配慮が多く為された一冊という印象が

読後に強く残りました。

無論、ここまでの記述をするには

相当たる漢文・中国古典への造詣の深さが

不可欠なわけですが。

そういう「深さ」を感じざるを得ない、

「之を仰げば愈々高い」文庫です。

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キム・サンホン『チャングム』

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キム・サンホン(米津篤八訳)『チャングム』全3巻、

(ハヤカワ文庫)、早川書房、2004年~2005年

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ドラマで有名な「宮廷女官チャングムの誓い」として

NHKで放送されたものの原作…という認識で

良いのでしょうか…。

ドラマには甚だ疎い上に

訳者解説にも明示されていないので

何とも言えませんが(*_*)

ともあれ、原作名は『医女 大長今』。

原著者はKim Sang-heon氏。2003年に刊行。

燕山君代から中宗代、つまり15世紀末から16世紀前半が

舞台となる時代です。ちなみに、その頃の日本は室町時代。

解説によると、歴史事実として実在が確認される女性、

大長今(テ・チャングム)の記事をもとに

著者が再構成されたとのこと。

典拠は『中宗実録』だとか。

燕山君代の暴政や中宗反正の話、

また医書や手術、漢方(現代韓国では「韓方」)、

更に当時の職位など、朝鮮古典世界を垣間見るのに

有用な内容が豊富です。

※あくまでも「垣間見る」或いは「雰囲気を味わう」程度。

基本、娯楽ですからね。

本気で当時の様相を知ろうとする場合は、

『朝鮮王朝実録』や儒者の個人文集などの

原典を確認する必要があります。念のため注意※

というわけで、息抜きしたいけれど勉強もしなければ…、

と追い詰められているときに

ちょっと口実を自分に作りながら(笑)読める作品です。

作品として、個人的見解としては、面白かったですよ。

DVDを借りたくなりました。

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二畳庵主人『漢文法基礎』

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二畳庵主人『漢文法基礎』、増進会出版社

1994年9月新訂版第7刷(1977年8月初版)

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版数、刷数を見るだけで

脅威の人気を誇っているように見える同書。

著者の二畳庵主人氏の正体については

概ね定説があるのですが、

それはググって頂ければと思います。

大学受験生向けに書かれていることもあり、

文章が非常に平明。

それでいて内容は充実。

今回初めて読んだわけではないですけど、

数ある漢文法解説書の中で

良いものの一つではないかな…と愚見。

周囲に進められる『漢文入門』(岩波全書)は、

大学教養課程生向けに作られたものだそうですけど、

何かとっつきにくさを感じます。

それがこの『漢文法基礎』には無い。

あと、助字の解説に全体の3分の1を費やしているのは

非常にありがたいです(約540頁中180頁程度)。

大学受験生のみならず教養課程生にも

十分有益な一冊だと思います。

復刊されない(2008年本日現在)のがイタイ所ですが…。

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柳成龍『懲毖録』

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柳成龍(朴鐘鳴訳注)『懲毖録』(平凡社東洋文庫357)、

平凡社、1979年初刊

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豊臣秀吉による朝鮮出兵(=壬辰・丁酉倭乱)について、

当時の情勢に対する反省の意味を込めて書かれた

古典の訳注本。

著者は16世紀後半に政治の中枢にあった

朝鮮儒者、柳成龍。號は西厓。

訳注者によると、

本書は2巻本や4巻本の全訳に当たるとのことで、

同戦争についての叙述が冷静な目で行われているとの評。

記事の中には時に人物描写が章に含まれたり、

それのみに費やされた章が存在します。

李舜臣あたりは代表格ですね。

注釈も、愚生からすると、綿密に施されているので

参考文献としても役立ちそうです。

韓国語式の発音に慣れた愚生としては、

人名や地名の発音表記(ルビ)で

語頭にラ行が書かれているのは

少々気になるところでしたが。

17世紀の諺解ではナ行(=ニウン)で書かれていることを

含めて考えると、

ラ行(=リウル)にしてしまうというのは…。

こういう枝葉末節はさておき、

解説や参考文献リスト、年表など、

勉強になるところは

しっかり学ばせて頂ける一冊です。

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中根千枝『タテ社会の人間関係』

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中根千枝『タテ社会の人間関係 単一社会の理論』、

(講談社現代新書105)、講談社、

1993年5月89刷(1967年2月初刷)

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きっと古典的名著なのでしょうねぇ…刷数が物語っています。

新書=一般向けだからかも知れませんが、

実際、分かりやすいです。

文章も平易ですし。

ただ、読んでいるうちに、

「朝鮮半島は視野に入っていない」という

印象を受けました。

1960年代当時で韓国・朝鮮に目を向けるなんて

かなり稀有なことだとは思いますが。

近現代史か政治学関係くらいでしょうしねぇ…。

人文学もゼロだとは言わないものの、

その数は微々たるものですし。これは現在もそう。

インドや東南アジアを引き合いに出しているのは

非常に興味深かったので(中国も少ないながらあり)、

ここに朝鮮が加わると一層面白くなるのではないかな…と。

ただこれは、愚生が朝鮮古典学を専攻するがゆえに

そう思ってしまうだけかも知れませんね。

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鴻農映二編・訳『韓国古典文学選』

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鴻農映二編・訳『韓国古典文学選』、

第三文明社、1990年初版

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都合5作品をコンパクトに収め、

編訳した1冊。

編訳者の御芳名は「コウノ・エイジ」さんだそうです。

姓が難しい。コウノ姓でこの漢字は初見。

それはさておき。

収録5作品は以下のとおり。

「金鰲新話」「壬辰録」「九雲夢」

「裵裨将伝」「南允伝」。

うち、「金鰲新話」が全体の3分の1程度を占めます。

「九雲夢」は以前、別の訳本で触れましたね。

原作はどれも長いはずですので

話の肝要を掴んで編訳されているようです。

※スミマセン、不勉強なもので

原作の確認ができていません…※

「九雲夢」は以前ご紹介した訳本と比べれば

一目瞭然の違いですから。

それだけ、編訳者の方がストーリーを

理解されているということだと思います。

素直に羨ましいです。

個人的には、後2作が特に面白かったかと。

前者は当時の儒教国教化社会での人間が、

そう簡単に品良くはなれない

生き生きとした実相を描いておりますし、

後者は反対に、

文禄・慶長の役の戦禍を受けた社会において

孝忠烈の徳目を守る人間の姿が描かれています。

こちらは「九雲夢」の影響がプロットにチラホラ見られますが。

なので後者は少々(けっこう?)現実離れした感もあります。

でも、いずれも原作を見たくなりますね。

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洪相圭訳『秋風感別曲』

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作者未詳「秋風感別曲」、

洪相圭訳『春香伝・秋風感別曲・洪吉童伝』(韓国古典文学選集3)、

高麗書林、1992年3版(1975年初版)

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例によって訳本です。
以前ご紹介した「洪吉童伝」と同じ本に収められています。
ですので、「洪吉童伝」や「沈清伝」と同じく洪相圭氏の訳。

【あらすじ】
深窓の令嬢、金彩鳳と、没落の陰りが指す両班家の御曹司、姜弼成。
偶然の邂逅が二人のロマンスを生んだが、
彩鳳の父が強欲な判書(=大臣クラス)に騙され一家没落。
女衒に身売りするも機知を用いて操を守り、弼生と再会を遂げる。
後、清廉にして風流を解する中央官僚が赴任し、
二人は結婚、金家は再興を遂げるのであった。
【あらすじ、了】

毎度おなじみ「そんな都合の良い話があるか!!」というくらい
韓国古典によくあるハッピーエンドで急速に話が終わります。

彩鳳という名前は、響きも良く字面も良いですねぇ。

基本的な話の流れは、
「主役二人のロマンス→ヒロインの苦難・危機
→誰かが助ける→終結」
となります。
少々短めの話ですが、
「洪吉童伝」よりはこちらのほうが好きですね。
彩鳳の父が強欲な判書に騙される様子は、
現代でもありがちで歯痒さを感じさせてくれますし。
「あんた、騙されてるよ!」みたいな。

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遠藤公男『韓国の虎はなぜ消えたか』

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遠藤公男『韓国の虎はなぜ消えたか』、

講談社、1986年初版

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ノンフィンクションとされる一冊。

韓国近代史とも言えなくはないのですが、

ひとまず韓国関連のその他一般ということに

させて頂きました。

取材の御苦労が見て取れる、そんな一冊です。

朝鮮における虎というのは、怖いながらも親しまれる存在です。

ソウルオリンピックのホドリも虎ですし。

親孝行の説話でも虎から親を守る孝行息子・娘の話が

よく出てきますしね。

それに、山神としても見られていたとか。

ともかく、かの地の文化とは切っても切れない存在のようです。

同書によると、かつてそれなりに居たチョウセントラが

少なくとも現在の韓国地域において絶滅してしまったのは

朝鮮総督府の害獣駆除政策に因るとされます。

大きな原因になったのかも知れませんが、

朝鮮朝時代の虎の被害や虎退治政策はどうだったのでしょう?

朝鮮王朝が駆除したかどうかは資料を見ていないので

何とも言えませんが、

少なくともそれなりの人数が襲われていたような気がします。

孝行話で「親を虎から守る」話の多さはそれを裏付けるものかと。

日本では、狼がそうだったのですかねぇ…。

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村松暎『中国列女伝』

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村松暎『中国列女伝 三千年の歴史のなかで』(中公新書166)、

中央公論社(現、中央公論新社)、1986年21版(1969年初版)

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21版も重ねているんですね、この本…。

確かに読みやすいし、面白いし。

劉向の『列女伝』はもちろん、『金瓶梅』『紅楼夢』、

その他多くの散文や韻文から

中国女性の像を浮かび上がらせようと試みる著書。

ここに引用される書物など氷山の一角に過ぎないことを

思い知らされる著述でもあります。

愚生も、追いつけないまでも手本にせねばと思わされた

貴重な新書です。

前半においてとりわけ立体的に

各章の女性像が浮かび上がっていたように思えるのは

愚生の読み違いなのかな…と、思ったりもします。

このあたりは、興味の持ち所次第なのかも知れませんね。

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許筠「洪吉童伝」

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許筠「洪吉童伝」(洪相圭訳)、

『春香伝・秋風感別曲・洪吉童伝』(韓国古典文学全集3)、

高麗書林、1992年3版(1975年初版)

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全体を読んでからまとめて読後感を書く手もありますが、

これはこれで一つの作品なので

便宜上独立させてつらつら書くことに致しました。

息抜きを兼ね、邦訳で読むことに。
70年代、80年代は朝鮮古典の邦訳がよく出たのでしょうか。。。

あらすじは、国の重役を父に持つ妾腹の麒麟児、洪吉童が、
庶子差別の甚だしい朝鮮朝の社会にて何らか栄達せんと
盗賊の頭領になって悪大官ならぬ貪官汚吏や生臭坊主から
ふんだくるのが前半。
後半になると吉童を捕まえられない朝廷が
彼の要求を飲んで兵曹判書(今の防衛大臣)に任じたので、
代わりに約束どおり子分たちと共に国を去ります。
去った後、行き着いた島で国を興して島の旧主を滅ぼし、
嫁を娶って母を迎え、亡父の墓を彼の国に作り、ハッピーエンド。

んー、特に後半が…。
前半の義賊像が後半で覆されているような。
主役:洪吉童の英雄たる素地の紹介として前半は機能しているのでしょうが…。

結局、朝鮮国王の臣下となり、
彼自身の国は朝鮮の属国と化するわけです。
子分どもは腕っ節だけで特殊能力の無い無頼の輩。
ヒーローチックに特殊能力(仙術)を使うのは吉童一人。

なので、敢えて『水滸伝』に例えるなら、
「朝鮮一人水滸伝」というか「水滸伝朝鮮縮小版」というか。

著者の本音が出てしまったのかなぁ…と。
「洪吉童伝」の著者:許筠もまた庶子で、
それゆえに差別を受けていた一人。
現実の体制に不満を抱きつつ、それでも国王に対し最高位の役職で
仕えたかったのでしょうか。
時代性による限界か、著者の出世願望が生み出せる限界か…。

なお、「洪吉童伝」は韓国や北朝鮮で御馴染みの話。
北ではかつて映画にもなったくらい。
見てみたいものです。

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貫井正之『秀吉と戦った朝鮮武将』

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貫井正之『秀吉と戦った朝鮮武将』(ロッコウブックス)、

六興出版、1992年初版

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今は無き六興出版から出された一冊。

少し幅広ではありますが、薄い本ですので

電車の中で読むには良いサイズ。

韓国・朝鮮関係(前近代)に関する書籍を

よく出して下さった、ありがたい出版社さんでありました。

今回は、古本にて入手。

タイトルにあるとおり、文禄・慶長の役=壬辰・丁酉倭乱を

題材としております。

朝鮮側の観点から、

郭再祐などの義兵将や朝廷の官僚などの動向、

また朝鮮国の情勢や明の対応、祖承訓など派兵将の挙動、

もちろん日本軍の状況も含めて記述されています。

このボリュームでうまく整理されていますし。

巻末に付された資料(年表など)もありがたいです。

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小曽戸洋『漢方の歴史』

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小曽戸洋『漢方の歴史 中国・日本の伝統医学

(あじあブックス011)、大修館書店、1999年6月初版

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以前から読もうと思っていたまま、

なかなか読めなかった本です(このフレーズが多いような…)。

些かとは言え武術を嗜んでおりますと、

技術という観点から、身体の構造がそれなりに気になります。

同書はどちらかというと、いわゆる漢方薬の分野、

したがって薬学的な側面を中心に、

鍼灸には或る程度触れておられます。

また、日本・中国の漢方を主に述べておられますが、

日本との関連から、朝鮮医学に関しても

若干の言及をして下さっています。

中国医学の形成期から近代(明治)に至るまでの歴史を

とても理解し易くまとめられているので、

短時間で概略を俯瞰するのに適しています。

より深く掘り下げる場合は、

小曽戸博士の他著も見られると良いかと思います。

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洪錫謨他『朝鮮歳時記』

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洪錫謨、他著『朝鮮歳時記』(平凡社東洋文庫193)、

姜在彦訳注、平凡社、1971年初版

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東洋文庫№に示されておりますとおり、

初期の一冊です。

訳注者の姜在彦先生は、

日本の朝鮮近代史・思想史研究に

長年携わってこられた方でもあります。

朝鮮王朝時代における年中行事・風習を

載せておりますが、訳注者である同氏により、

上記内容に関する古典三つを合本・訳注した

体裁となっています。

(1)洪錫謨『東国歳時記』

(2)金邁淳『洌陽歳時記』

(3)柳得恭『京都雑志』巻一、「風俗」

本書凡例にありますように、

いずれも18世紀後半から19世紀の朝鮮文人の手になる古典。

一つの風習に関する説明が短いので、

寝る前や何かの合間に読むこともできるという意味で

お手軽且つ読みやすい一冊です。

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平野聡『清帝国とチベット問題』

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平野聡『清帝国とチベット問題―多民族統合の成立と瓦解

名古屋大学出版会、2004年11月初版2刷(7月同版1刷)

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ベッドのお供に読んでいた本がようやく終わりました。

時事ネタとして読んでいたわけではなく、

購入してしばらく積読していたのを

ここにきてついに手を伸ばしたというのが実情。

本書は同氏の博士学位論文を土台として刊行されたもので、

愚生が読むに至ったのも、一理由としては

刊行される水準にある博士論文というものについて

勉強をさせて頂くためでした。

もう一つは、自身が韓国を専攻としていることもあり、

その隣国では何がどのように起こっていたのか、

朝鮮王朝も含まれる、清朝の対外への眼差しを

勉強したかったためでもあります。

これは朝鮮朝にとって外的環境の一条件たりえるものです。

で、理解力のまだまだ乏しい愚生が

かろうじて勉強できたことというと、

(1)「チベット問題」なる現象の発生にかかる一連の背景

(2)清朝の、統治に係る世界観・思想史的構造

(3)現今中国の「中華民族」「中華世界」観について

他の方はきっとこれ以上のことを学ばれるのだと思います。

(1)(2)の両件は、

燕行使として彼の地へ赴いた朝鮮使節の見聞・実感した

光景を成すものであり、

17世紀以降、朱子学への傾注が

激化・深化・閉塞化していくとされる

朝鮮朝の思想史を見る上でも興味深い対照事例と

思いながら読んでいました。

(氏は同著序章で朝鮮儒者の苦渋についても若干触れています)

学位論文をまとめる上でも、とても勉強させて頂けた一冊です。

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洪相圭訳『沈静伝・興夫伝』

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洪相圭訳『沈静伝・興夫伝』(韓国古典文学選集1)、

高麗書林、1992年3版(1975年初版)

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以前読んだ『九雲夢』と同じシリーズです。

訳者も同じ。

タイトルのとおり、

「沈静伝」と「興夫伝」の二編が収められております。

愚生は、後者のほうが好きかなぁ…と。

沈清伝は、「孝女沈清が、目の見えない父の視力を得るために、

航海の生贄を求める商人に身売りをして、

紆余曲折して再生し、高貴な身分となる」話。

人外の世界を由来とした設定が多すぎるような。

孝行譚ではあるのですが、「いかにもお話」という気もするので

感情移入しきれないのではないかとも思えます。

特に後半。

それに比べると「興夫伝」はまだマシかなぁ。

悪人兄夫婦(特に兄)に虐げられ、赤貧の中でも

堕落せず生きる善人弟夫婦の話。

韓国版「舌切り雀」。むしろ「舌切り雀」が日本版「興夫伝」か。

もちろんこちらも人外の世界からの干渉があるのですが、

「舌切り雀」のおかげもあってか、違和感はありません。

ただ、こんな兄でもハッピーエンドに含まれるのは

ちょっと意外でした。

個人的には成敗して欲しかったです。

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洪相圭訳『九雲夢』

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洪相圭訳『九雲夢』(韓国古典文学選集2)、

高麗書林、1975年

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17世紀中葉から末葉に生きた知識人、金万重の作を翻訳。

同じシリーズの1巻に沈清伝、3巻に春香伝が含まれるせいか、

この2巻以外の巻が3版まで出ているようです。

(高麗書林様サイト参照:http://www.komabook.co.jp/

表面的な話をなぞると、

『とある修行僧がとある邂逅を契機として煩悩にさいなまれたので、

「師によって俗界に転生させられて栄華を堪能するも

その空しさと自身の信仰心に気づく」夢を見せられ、

修行を全うする』というもの。

帯には「現世の富貴栄華の虚しさを主題に、

没落をたどる李朝貴族の懐古の夢を描いた両班文学」との記述。

ただ、結末が夢の最後をトレースしたようなハッピーエンドで終わるあたり、

果たして本当に帯の文言どおりなのか、疑問が残ります。

もちろん、表面的にはそうなのですが…。

著者金万重の時代は愚生の専攻する時代とも重なるので、

機会を作って原本を見るようにしたいものです。

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池内敏『「唐人殺し」の世界』

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池内敏『「唐人殺し」の世界―近世民衆の朝鮮認識』、

(臨川選書18)、臨川書店、1999年初版

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書類作成に追われる中なのに、いや、だからこそか?

ともかく無理やり読みました。

読みたいものは仕方が無い。

そんなわけで書類作成の合間に休憩を入れるたび、

読んでいました。

本書は分量からすれば気軽に読める一冊。

中身は綿密な事例検証の上に著されているので、

けっこう(読み応えがあるという意味で)やや重厚。

江戸後期の朝鮮通信使、崔天宗が

対馬藩通詞(通訳)の鈴木伝蔵に殺されたという事件を題材に、

それが文学の世界で如何に摂取・表現・鑑賞されたかを検証することで

サブタイトルにもある「近世民衆の朝鮮認識」の考察を図られています。

「勉強になるな~」と思いながら、読了。

個人的には、この崔天宗殺害事件が

朝鮮儒者の間でどのように・どの程度認識されていたのかも気になります。

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山下武『江戸時代庶民教化政策の研究』

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山下武『江戸時代庶民教化政策の研究』、

校倉書房、1969年

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読了するのが惜しいと思われるくらい

楽しく読みました。

研究書を読むことは立場上多いわけですが、

こんな気持ちで1頁ずつめくっていけた本は

そう多くありません。

楽しめることはままありますけど。

1969年出版、つまり概ね40年前の書籍ではあるものの、

近世国文・江戸時代史・同思想史をされる方は勿論、

中文・中哲や朝文から見ても

示唆されるところは多いのではないかと思います。

一応、著者は教育学を御専門とされておられるので

教育史に分類されるのが穏当なのでしょうがf(^_^;)

惜しむらくは既に絶版されていること。

それも久しいようです。

こんな良書がどうして絶版…。

良書だからこそ絶版なのでしょうか…。

ともあれ、内容としては、

江戸幕府の施行した庶民教化政策と

それにおける書籍・出版物の役割。

したがって、禁書や出版規制、教化書刊行といった

出版物を対象ないし手段とした政策を

主として取り上げておられます。

今風に言えばメディア政策にも通ずるものではないでしょうか。

オンデマンド出版で良いので復刊して欲しいものです。

もったいない…。

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金谷治『老子』

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金谷治『老子 無知無欲のすすめ』(講談社学術文庫1278)、

講談社、1998年第6刷(1997年第1刷)

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昨日の『詩経』と並行して

電車内で読んでいた本をもう一冊読了。

今度は『老子』です。

訳注は、これまた碩学、金谷治先生。

正直なところ、固いところを押さえている訳ですが(笑)

さておき、読みやすいです。

しかも原文が載り、そこへ韻も示されている上に、

巻末には索引まで付されています。

もちろん、金谷先生の注釈や解説もあります。

お得感満載といった文庫です。

現代語訳もかなり読みやすいですし。

「さすがだなぁ…」の一言に尽きます。

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目加田誠『詩経』

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目加田誠『詩経』(講談社学術文庫953)、

講談社、2004年第11刷(1991年1刷)

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斯界の碩学、目加田先生の一著。

著者によって任意に選ばれた

『詩経』原典からの詩について意訳が載せられた他、

『詩経』の成立や伝来、テクニカルな部分、

そして総括的な叙述と続けられます。

経典の全訳注とは、如上のように少々違います。

全訳注が必要な場合は、

明治書院さんの新釈漢文大系シリーズに収められた

『詩経』を参照するのが妥当かと。

とはいえ、詩経研究の泰斗によって書かれた同著は

文庫ですので手軽で読みやすく、

愚生のように韻文が苦手な方にも適しているのではないかと。

それでも、やはり韻文が苦手の愚生にとっては

読破に難航しましたが…。精進します。

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『史記 八(列伝一)』(新釈漢文大系88)

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水沢利忠『史記 八(列伝一)』(新釈漢文大系88)、

1994年第3版(1990年初版)、明治書院

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入門者を含め漢文を読まれる方にとっては

外すことのできないシリーズ、

明治書院さんの刊行されておられる新釈漢文大系の

一冊です。

しかも超有名な『史記』です。更に「列伝」。

紀伝体を初めて採用した中国の古典です。

正直、カテゴライズは迷いましたし、

結局決めきれずに複数羅列。

通史の体裁を採って著者司馬遷から見た

過去のことを記録しているのですから

史書であることは事実ですが、

一面、「天道是か非か」を問いつつ事件を叙述している以上、

そこに彼の思想が入り込んでいないわけも無し。

文学としても、伝における彼の叙述は

ここでご紹介するまでも無く大いに論じられているところ。

もっとも、当時の学問が現今のように細分化されておらず

文・史・哲混交した状態であったことを踏まえると

こんなカテゴライズ自体意味が無くなるのかも知れませんが。

「文」なわけですねぇ。

さて、タイトルでは敢えて水沢博士の御芳名を控えさせて頂きました。

『史記』の「著者」は、司馬遷か少なくとも昔の方でしょうし、

というより、新釈漢文大系では

「通釈・語釈・余説」を書かれた方を各巻の「著者」としているものの、

個人的には「訳注」ではないのかな…という思いが

払拭できていないからです。

ともあれ、活字化した原文には訓点が施され、

その下には読み方が書かれており、

更に通釈・語釈・余説でフォローされているわけですから

初心者から勉強に資すること請け合いなのは事実ですが。

これができるというのはすごいことだと思います…敬服のみです。

何だか、シリーズの読了になってしまいました。まだまだなのに。

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菊地章太『弥勒信仰のアジア』

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菊地章太『弥勒信仰のアジア』

(あじあブックス051)、大修館書店、2003年

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「章太」と書いて「のりたか」さんと読まれるのだそうです。

ですので、注文されるときはこの点に注意。

さて。

本書は、

「弥勒信仰という切り口で、

アジアのたどった歴史のひとすみをとらえ」(p7)ることを

目的として著述されていると、

著者自ら述べられております。

弥勒信仰…朝鮮においては花郎がつとに有名ですが、

同書においてはこれをも包括して

中国や中央アジアへも展開していた

弥勒信仰の新たな側面を分かりやすく述べられています。

ここで「全容」と書かないのは、

単に、「全容」と判断できるだけの素養を

倭儒が持ち合わせていないために書けないだけの話で、

実際には全容に近いものなのかな、と

素人判断ながら思ったりもします。

少なくとも、弥勒信仰の大きな広がりを

想像させてくれるのは事実です。

素直に「面白い」と思わせてくれる一冊。

息抜きと勉強の両方を満たしてくれました。

なお、ここでは「思想史」に分類されていますが、

これはあくまでも倭儒が勉強になった視点からの話で、

菊地氏の御専攻は比較宗教史です。

念のため、補足。

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鈴木陽一編『中国の英雄豪傑を読む』

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鈴木陽一編『中国の英雄豪傑を読む 『三国志演義』から武俠小説まで

(あじあブックス047)、大修館書店、2002年

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最近、あじあブックスシリーズで

中国古典文学ものばかり読んでますね~。

国文ものもそうですが、

これまた隣接分野の中文さんも

やはり参考になります。

こちらは、編者の鈴木陽一氏ほか四名の方の共著。

そのお一人として、以前『漂白のヒーロー』でご紹介した

岡崎由美氏の御芳名も連なっています。

編者である鈴木陽一氏の論文を冒頭に載せ、

『三国志演義』・『水滸伝』・隋唐物語・武侠小説と

題材毎の論が展開され、

最後に再度鈴木氏の論文でまとめられています。

今回も読んでいて気づかされるところがあり、

いつも勉強させてもらっている感じがします。

『三国志演義』『水滸伝』と言えば朝鮮文学にも影響してますし、

隋唐ものだと、史実でもそうですが、隋や唐と高句麗との戦いが

描かれることもあります。

武俠に当たるものは…まだまだ勉強中で今は出てきませんが、

あって欲しいなぁというのが素直な所感。

史実はともかく、花郎(Hwarang)は

素材としてみるとカッコイイし。

※「鉄拳」シリーズではないです※

早くこういう良い原稿を書けるようにならないと…。

本年度後半不作wobbly

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北条秀雄『新修浅井了意』

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北条秀雄『新修浅井了意』(笠間選書11)、

笠間書院、1974年

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以前から、浅井了意について興味を持っていたので

大学図書館に行ったところ、書架で目に付いた本です。

(この時点で愚生が仮名草子も多少なり視野に入れていると

分かってしまいますねcoldsweats01

手軽な分量だったので軽く読めると思って借りてみました。

しかし、得た内容は分量より多く、

さすが定評の有る笠間書院さんだなぁと感嘆。

とてもスッキリとまとまっている上に

巻末には浅井了意著作年表も付されているので、

レファレンスとしての機能もあります。

「これから了意をやろうと思う方への一助ともなれかし」

はしがきにて仰る著者のお考えが

見事に具現化していると言えそうです。

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岡崎由美『漂泊のヒーロー』

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岡崎由美『漂泊のヒーロー 中国武侠小説への道

(あじあブックス046)、大修館書店、2002年

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このシリーズ、

良質にして手軽なので合間についつい読んでしまいます。

今回は武侠小説を切り口にしたこの一冊。

前近代における中国の、

正義の偶像というものの一端が

面白く且つ平易に解説されています。

武侠小説を題材としているので

出てくるのは男女とも剣侠・剣仙。

あと、冒頭のほうで刺客。

中盤で清官(清廉な官僚)といった具合。

人間って、現実社会で利益を追求しつつも、

文学の世界では道徳の具現者・正義の実行者を

楽しむ傾向が有るように思えます。

最近だと『斎藤さん』とか『ZETMAN』とか。

テレビでは戦隊ものがまだまだ現役ですし。

バトルフィーバーJに始まる、あのシリーズです。

高邁な道徳議論なんぞよりも、

文学に現れるキャラクターの姿にこそ、

「正義」が秘められているのかも知れませんね。

それを確認させてくれる一冊です。

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竹内康浩『「正史」はいかに書かれてきたか』

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竹内康浩『「正史」はいかに書かれてきたか 中国の歴史書を読み解く

(あじあブックス042)、大修館書店、2002年

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引き続き、あじあブックスより一冊。

このシリーズ、面白くて好きです。

分量も手軽なものなので3時間もあれば読めるし。

といって内容は勉強になりますし。

このバランスが良いのですよね。

さて、シリーズについて述べるのはこのくらいにして。

文学に入れるか史学に入れるか迷いましたので、

両方に入れておきます(笑)

個人的には、文学かと思っていますが、

歴史叙述の問題ですので史学史の問題であるとも

確かに言えます。

愚生の見方は

「「歴史を書く」という動作を通して何が表現されてきたか」

となります。

両者に共通するのは「歴史の書法」。

この手軽な分量で斯様なテーマを分かりやすく書くのは

大変な労力ではなかったかと。

つまり、それだけ分かりやすく書けているということ。

いわゆる「歴史問題」の理解を助けてくれる一冊でもあります。

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二階堂善弘『封神演義の世界』

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二階堂善弘『封神演義の世界 中国の戦う神々』(あじあブックス006)、

大修館書店、1998年

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ひところ話題になった『封神演義』を題材に、

中国の大衆文学・民間信仰の関連を解き明かす一冊。

出版社である大修館書店さんの創業80周年記念出版という

事業としての同シリーズ刊行では、

概説書ながら興味深い内容がラインナップされています。

同書もその一冊。

中国民衆の精神世界を着実に読み解く展開からは、

著者の堅固にして該博な見識が垣間見えます。

ひとえに羨望する限りです。

概説書を書くことこそ難しい、それを確認させてくれる一冊でもあります。

なお、同書刊行当時は茨城大学に居られた同氏は、

現在、大阪にある関西大学中文科で教鞭を執っておられます。

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金谷治訳注『論語』

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金谷治訳注『論語』(岩波文庫青202-1)、岩波書店、

1981年25刷(1963年1刷)

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中哲研究では著名な金谷治先生の訳注による『論語』

文庫ながら原文・訓読文・現代語訳が揃っているので

電車の中などで手軽に原文を楽しめる一冊です。

巻末には孔子略年表・春秋時代(論語関係)略地図、

更に語句索引まで備わっています。

おかげで、ふと気になったフレーズを思い出したら

その場で調べられます。

『論語』は、一章句あたりが概ね短いので

何かの合間に読む漢文として

とても適しているのではないかなと、いつも思います。

もちろん、言葉自体の含蓄あってこそ

現代でも読み継がれているわけですけどね。

現代語訳も読みやすく、

補注も適度に付けてくれているのが嬉しい一冊です。

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裴宗鎬『朝鮮儒学史』

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裴宗鎬(川原秀城監訳)『朝鮮儒学史』、

知泉書院、2007年

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昨年購入していたものの、

なかなか手が回らず、

ようやく読み終えました。

韓国では古典的名著とされる

同氏『韓国儒学史』(延世大学出版部、1974年)の邦訳です。

川原秀城教授(東京大学)監訳の下、

門弟の方々(主として博士課程生)によって

翻訳がなされています。

朱子学における理と気のターム及び概念を軸に独自の発展をした

朝鮮思想における人間存在への考察の史的展開を概説した、

まとまりのある高著です。

取り上げられる儒者が李退渓以降旧韓末の儒者までですので、

時代は16世紀以降に絞られます。

つまり、朝鮮王朝中期から末期(旧韓末含む)まで、ですね。

翻訳も、さすがに経学に造詣の深い同氏の監訳の賜物で、

読みやすい文章です。

もっとも、概説とは言え専門書ですので

新書などの読みやすさとは必ずしも一致しないですけど。

日本で朝鮮儒教を専攻しようとする方は甚だ少ないと思いますが、

日本思想や中国思想を御専攻の方が

比較対象として朝鮮思想の流れに目配りをされる際にも

有用かと思います。

基本的には理気論及びそれを観点とした人間存在に

関する内容ですので、

礼学・礼制・礼俗や、倫理学的或いは社会史的な要素には

言及されておりません。念のため。

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金泰俊『虚学から実学へ』

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金泰俊『虚学から実学へ 十八世紀朝鮮知識人洪大容の北京旅行』、

東京大学出版会、1988年

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本を見ると新しく見えるのですが、

既に20年前の著作なのですね。

今更ながら驚きました。

それはさておき。

サブタイトルにもあるように、

18世紀の朝鮮知識人(士大夫)、洪大容が

燕京使に随行して燕京(今の北京)へ行った際の

清朝治世下の中国知識人たちとの交流や

そこで得た人間関係、彼の知見や考えなどに対し、

彼の旅行記を元にトレースを図った力作。

18世紀といえば朝鮮でも李朝後期、

日本でも近世後期に入っていますから、

良くも悪くも豊かになる時期でもあります。

朝鮮では相変わらず四色党争が止まずでしたが…。

その中で洪大容は自国内の如上の「停滞」に飽き足らず

西洋の天文学、清朝知識人の知見にも関心が及び、

彼の中で朝鮮実学の芽が生えるわけです。

洪大容を通して当時の朝鮮における学問の在り方が

問われ、見つめ直されています。

個人的には、少し違うところにも興味を持てましたが、

それは余談ということで。

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徳田進『孝子説話集の研究』(近世篇)

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徳田進『孝子説話集の研究―二十四孝を中心に』(近世編)、

井上書房、1963年

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先日読んだ同博士の『孝子説話集の研究』三部作の第二部。

第一部では中世篇として室町時代(戦国等含む)を

扱っておられましたが、

近世篇では主に江戸時代を扱っておられます。

また、比較考察や海外からの影響の考察を行うために

同時代の周辺地域で発生した二十四孝系書物へも

視野を広げておられます。

つまり、中国の明清時代、及び韓国の朝鮮王朝時代。

やはり記念碑的大著ですね…。

近いうち、同著近代(明治)篇も読む予定です。

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加地伸行全訳注『孝経』

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加地伸行全訳注『孝経』(講談社学術文庫1824)、

講談社、2007年

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十三経の一つ、『孝経』の全訳注のみならず、

同氏の『孝経』・孝に関する論考までも収めた文庫。

加地伸行博士は儒教研究ではすこぶる高名な方で、

『儒教とは何か』(中公新書)等でも有名です。

文学や思想で孝に焦点を当てる際にも、

また、親子(血族)関係の徳である孝の性質上、

身近な問題であるだけに儒教学の入門としても

読んで損の無い、しかも文庫なので手軽なものです。

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北島万次『加藤清正』

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北島万次『加藤清正 朝鮮侵略の実像』(歴史文化ライブラリー230) 、
吉川弘文館、2007年
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いわゆる「朝鮮の役」を題材にした一冊。
日本では文禄・慶長の役、韓国では壬辰・丁酉倭乱と呼ばれている、
事実上2度目の東アジア戦争を指します。

なお、この戦いを題材とするサブカルとしては
『壬辰録2+』という、韓国のウォーシミュレーションゲームを
挙げることができます。
きっと他にもあるのでしょうけど、未確認です。
日本でも『壬辰録2』がかつて翻訳・販売されていました。

著者は北島万次氏。
日本史の方で、「朝鮮の役」を長年研究してきた碩学。

また、出版社も日本史では御馴染みの吉川弘文館で、
同社から出された一般向けの「歴史文化ライブラリー」シリーズなので
手頃な分量で読みやすい一冊でもあります。

同書においては
「日本も朝鮮も、互いに一枚岩では無かった」ことが
具体的に、また分かりやすく描かれています。

例えば、日本軍は戦功を争いもすれば
この戦争自体の非を考えて出兵を意図的に遅らせる軍が出てきます。
一方、朝鮮国では咸鏡道の人々が
日頃の恨みを晴らさんとばかりに裏切ります。
避難してきた王子を捕まえて日本軍に渡すくらいです。

また、この「一枚岩ではない」状況が、
日本の政権交代につながる背景となったようです。

なお、大きくは取り上げられませんが、
朝鮮側に見られる儒者たちの活動も興味深いところ。

全体として、秀吉の部下である加藤清正に焦点を当てており、
同戦争を概観するにはスッキリとまとまっている好著です。

こういう本を書けるようになりたいですね。うーむ。

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許南麒訳『春香伝』

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許南麒訳『春香伝』(岩波文庫赤73-1)、岩波書店、1956年
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言わずと知れた…というのは韓国の方か
朝鮮学を専攻する人間に限られますが、
その筋では非常に有名な古典です。
なお、同書は異本が多く著者も明らかでないため、
著者名は書かれておりません。
よってここでも訳者のみ記しました。
さて、日本で出ているもののうち、
今回入手したのは1956年に初版が出た翻訳もの。
岩波文庫版です。

まるで重版する気配が無いので已む無く古書を購入。

以前にも読んではいたものの、
入手できなかった書籍の一つでもあります。

分量も少なく、非常に分かりやすいストーリーです。

大筋としては、烈女顕彰の小説。
「正義は勝つ」という話。

端的には、烈女と暗行御史との恋愛物語です。。

暗行御史というのは国王直属の官僚で、
隠密裏に地方政治を監察し、悪事があればそれを裁く任を持つ役職。
日本で言えば、水戸黄門と隠密同心を足して2で割ったようなもの。
※隠密同心はドラマだけだと思いますが…※

注もしっかりしているし、
よく分からない単語は飛ばし読みしても楽しめる訳になっています。
さすが名訳とされるだけのことはあります。

日本では中国古典小説ばかりがもてはやされますが、
韓国の古典にだって面白い話は沢山あるはずです。
背景に中国文学が厳然と存在するのも事実ですが…。

とにかく、久々に読んでも
初めて読んだときのように面白く読了できる一冊です。

なお、暗行御使や春香伝をモチーフとした和製原作マンガに

CLAMP『新・春香伝』
皇なつき『李朝・暗行記』
尹仁完・梁慶一『新暗行御使』(日韓同時発売、講談社が編集・出版)

があります。
もっとも、この三つ以外は韓国からの翻訳ものしか
日本には存在しないのではないかと…。

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加藤常賢『禮の起原と其発達』

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加藤常賢『禮の起原と其発達』、中文館書店、1943年

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静養中に読んでいた一冊。

中文では知らぬ者無しの加藤常賢博士の高著であります。

積読状態だったのですが、

せっかくの静養でしたので読んでみました。

前半は礼の由来として民俗との関連を取り上げ、

後半にて『春秋左氏伝』や『論語』など初期儒教文献に現れる

礼の学問的展開を論じておられます。

礼学を見る場合、上で加藤博士の章立てされたように

民俗・経学の両側面から考察することの重要性は

今更言うまでもないことでして、

それを65年前刊行の同著において実行されているというのは

このアプローチの重要性を示す一端だと考えられます。

ただ、実際に行うとなれば、

経学的素養に加え、歴史学の素養も当然要求されるわけで、

現在のように学問の多様化・細分化が起こり

各分野での情報量が当時に比して飛躍的に増えた状況においては

なかなか一筋縄ではいかない要求とも言えます。

むしろ、よく唱えられている「学際的研究」というのは

文史哲への回帰とも言える現象なのではないかとも思えます。

少し話が逸れました。

今回はこの辺で。

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祖父江孝男『文化人類学入門』

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祖父江孝男『文化人類学入門 増補改訂版』(中公新書560)、

中央公論新社、2002年24版(1990年初版)

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史跡踏査の関係から手に取った書物。

現地取材が喧しく唱えられるようになってから

久しく時が経っているかと思いますが、

文史哲の分野で現地の空気が蔑ろにされていたかというと、

必ずしもそうでないように思えます。

ただ、研究対象として文献を主に扱うため、

史跡踏査が前面に出て強調されなかっただけではないかと。

同書を紐解くと、文化人類学においても

「揺り椅子に座った文化人類学者になるな」と

いった趣旨の言葉があるようで、

文化人類学について不肖にも何も勉強してこなかった愚生は

何と言いますか、ある種「目から鱗」的な感じを受けました。

「文化人類学=現地調査」というのは、

「文史哲=座学」と対に捉えられがちに思えてしまい、

それが何とも嫌いなのでしたが。

実際に史跡踏査があるわけですしねf(^_^;)

ただ、せっかく文献資料が残っているのなら、

やっぱり目を通して然るべきではないかと。

愚生にとっては、

周囲がどうも「現地調査礼賛」な風らしく、

それ故に感じていた疑念を

払拭してくれた好著と言えます。

さすがロングセラーですね。

入門ですから御専門の方は既に読んでおられると思いますが、

これから勉強される方や興味を持たれた方には

良い書物だと思います。ボリュームもお手頃ですから(^-^)

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小林勝人訳注『孟子』

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小林勝人訳注『孟子』上・下(岩波文庫青204-1・2)、岩波書店、

上巻:1968年初刊、下巻:1972年初刊

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岩波文庫版『孟子』です。

2008年最初の読了は四書五経の一つ、孟子ということで。

上巻と下巻でボリュームが1.8倍くらい違います。

訳者小林氏によると、必要最小限の参考解釈のみ述べたのが上巻、

御自身の訳に資するもの以外の参考解釈も載せたのが下巻なのだとか。

下巻末の「解説」あたりでそのように述べておられました。

小林氏は、東洋大学中哲で教鞭を執っておられたようです。

これも下巻末に記載。

師匠筋としては、武内義雄博士の門弟となります。

下巻末に武内博士の文章を付し、読者の理解を助けております。

他の解釈も対照しないと何ともいえませんが、

読者の便宜のために、時に意訳の如きルビ打ちをされているなど、

少し変わった漢字の読み方も見られます。

個人的には、文章索引が欲しいところです。

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徳田進『孝子説話集の研究』(中世篇)

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徳田進『孝子説話集の研究 二十四孝を中心に』(中世篇)、

井上書房、1963年

※クレス出版より『説話文学研究叢書』第四巻として復刊

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国文学研究の古典的名著。

また、国文学のみならず朝鮮文学・中国文学の専攻者にとっても

国文学との関係を鑑みる上でとても参考になる一冊。

続編に近世篇、近代篇(明治期)と続きますが、それは後日として、

中世篇では概ね室町時代までをカバーしております。

一度、論文を書くときにざっと読んだことはあるのですが、

このたび改めて読み直してみました。

正直言って、著者、徳田博士の該博にして深遠な知識を

感じずにはおれません。

ここまでの考察を著書として具現化するには、

博士個人の才能も勿論ですが、

長年にわたる地道な研鑽が不可欠。

気になったのが、植字の問題で、

ところどころ文字がひっくり返っているところ。

もちろん、内容とは関係ありませんけど、

今後も読み続けられるであろう著書であるだけに

細かい点も気になります。

クレス出版さんから出されている版は

まだ拝見しておりませんが、

このような著書を復刊して下さるのは非常にありがたいです。

敢えて難を言えば、

「セットでしか買えない」ような記述がサイトに見られること。

徳田博士の『孝子説話集の研究』三部作だけで

購入できないものでしょうか…。

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クレス出版:http://www.kress-jp.com/

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とりあえず、大学の研究室にでも入れて貰いましょうかね。

ともあれ、さすがという他無い高著です。

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尹仁完・梁慶一『新暗行御史』

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尹仁完・梁慶一『新暗行御史』全17巻・外伝1巻(SUNDAY GX COMICS)、

小学館、2001~2007年

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少し前に完結したばかりの同著。

朝鮮学に関わるものであれば御馴染みの「暗行御史」がモチーフ。

暗行御史:Am-haeng Eo-sa/암행어사。

御史は中国の御史大夫に由来する名称。

暗行は、暗に(ひそかに)行する(いく・おこなう)といったところでしょうか。

日本のモチーフでは水戸黄門がよく並べられます。

共通点は、

・正体を隠して全国を行脚

・行く先々の悪政を暴く

・最後は印籠/馬牌を出して、正体を明かし裁定

といったところでしょうか。

ただ、歴史上の実在如何は別にしても、

水戸黄門は徳川光圀、つまり徳川御三家出身。

朝鮮王朝でいうと、宗族(王族)です。

暗行御史は官僚(文官)ですからねぇ。

したがって人数も違うし、何より、主従の差が…。

倭儒としては、全国行脚という点は異なりますが、

同じく時代劇の「大江戸操作網」で設けられた隠密同心のほうが

イメージに近いような気もします。

ウィキペディア「大江戸操作網」によりますと、

隠密同心は時の老中、松平定信によって設けられた極秘組織で、

普段は江戸町内で町人として暮らし、

諸悪を探索し、治安を維持する役柄です。

時代劇ですので当然、立ち回りもあります。

松平定信と言えば、寛政の改革を主導した人物。

18世紀末に活躍しております。

寛政異学の禁や出版物規制といった庶民教化政策も施行していますので、

隠密同心制度も何か元ネタがあったのかも知れません。

※水戸黄門の全国行脚も事実と一致しないですし※

ちょっと調べてみようと思います。隠密同心。

閑話休題。

まだ最終回を迎えて間もないため、ネタバレの話はできません。

代わりに、というか朝鮮儒教の伝統が垣間見られる点を二つご紹介。

(1)とあるシーンで、蘇った先祖に対して主役の言った台詞の趣旨:

「お供え物が足りなかったから現世に蘇ったのか?」

(2)世界背景において「敵」に為された設定:

「敵」は、人間がいなくては自存できない

(1)は、チェサ、つまり祖先祭祀にまつわるネタ。

(2)は、人間の心に関係する考え方。

前者は礼・鬼神、後者は性善説・性悪説の問題と表現できます。

この二点において、

「あぁ、韓国だなぁ。朝鮮儒教だなぁ。」と発想に感心し、

ニヤリと笑ってしまったのでした。

もちろん、ストーリーも好きですよ。

日本では稀有な、韓国古典モチーフを用いた、

しかも韓国で出たものを後から翻訳したものではないマンガです。

日本の作家さんで韓国古典モチーフのマンガは、

皇さつきさんの『李朝暗行記』と

CLAMPさんの『新・春香伝』、

あと、司敬『沙也可』が思いつきます。

んー、ほとんど暗行御史もの…。

『沙也可』は秀吉の朝鮮出兵が元ネタですけど。

そろそろ暗行御史以外のモチーフが用いられても

良いと思うんですけどね。

せっかく『新暗行御史』で多くの韓国古典が

ストーリーごとのモチーフとして登場したわけですから。

今後のマンガに注目しましょう。

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井上俊『武道の誕生』

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井上俊『武道の誕生』(歴史文化ライブラリー179)、吉川弘文館、2004年
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電車の中でも立ちながら読みやすい歴史文化ライブラリーシリーズ。
図書館にもあると思います。古本で購入できるかも知れません。

内容は、「武道」という概念が如何にして人為的に作られ、
それが現代の日本に広まり、今の我々の頭に在るか、
社会学から分析したものです。

題材は柔道ですが、囲碁等では一般的であった段級制を
初めて我々の側に取り入れたのが柔道であるからこれは当然。
時折、剣道や弓道も引き合いに出されます。

少林寺拳法・日本拳法・空手が出てこないのは
跆拳道側としては少し残念ですが、
範囲を日本に絞っているのでこれもやむなし。
これらを扱うと、中国や沖縄、朝鮮(韓国)を視野に入れる必要が生じ、
話が散漫になりやすい為と考えられます。

※日本拳法は確か柔道の当身を生かす目的で
再構成されたものだと聞いていますので、少林寺その他とは異なります※

軽く読んでみるだけでもけっこう面白い本です。

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崔昌祚『韓国の風水思想』

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崔昌祚『韓国の風水思想』(三浦國雄監訳、金在浩・渋谷鎮明共訳)、

人文書院、1997年

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朝鮮学分野であっても風水は、
それはそれとして余り食指が動かなかった同書。
まさに「まだ読んでいなかったのか?」という感じですが。

同書は崔氏の博士論文を日本語訳したもの。
本文約350頁中、前半200頁強は風水説そのものの理論整理なので、
既に風水説の理論を理解している、
あるいはとにかく韓国のことを読みたいという場合は
前半を飛ばしても読めます。

風水といっても、巷間を賑わせているような
「インテリア風水」の如きものではなく、
国都風水。つまり都市の構造を見るうえでの風水。
ですので陰宅風水(墓相のための風水)とも異なります。
あと、図讖(としん)や明堂・吉地論にも若干触れています。

倭儒にとって興味をもてたのは、やはり後半部分。
ただ、後半150頁弱に国都風水・図讖・十勝地(明堂・吉地論)を
全て盛り込むのは、少し無理があるのではないかな、とも。
一つ一つで著書にできるだけの内容がありますし。
国都風水に焦点を絞るほうが楽しめそうに思えます。
150頁だと新書(概ね200頁程度)よりボリュームが少ないですもんねぇ。

とはいえ、自分が同じボリュームで書くとなると、
「言うは易く、行うは難し」なんですけど。
文を書くのは難しいです。

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西田太一郎『漢文法要説』

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西田太一郎『漢文法要説』、朋友書店、2007年再刊

(東門書房、1948年初刊)

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全160頁の小さな本。オフセット本のような装丁です。
しかし、著者は斯界で著名な西田太一郎氏。
似たような内容で以下の共著もあります。

・小川環樹・西田太一郎『漢文入門』(岩波全書)、岩波書店、1996年
(初刊1957年)※絶版?

ボリュームで言えば、前者は後者の3分の1弱。
さはさりながら、どちらも同じ著者が関係しているので
書き方は似ていると思います。
「入門」「要説」という謳い文句が付されているものの、
斯界の先達が書かれているだけあって、
入門レベルで終わっていない内容です。

ただ、単著と共著の違いか、
書き方に或る程度の差が見られます。

個人的には、西田氏単著の前者が好きです。
漢文(=古典漢語)は既に音声言語ではなく、
何度も読んで訓読のリズムをつけるべきだと思っているので、
手軽な前者のほうが持ち運びに便利な気も。
それに、後者に比して、ですが
前者のほうが書き方もすっきりしていると言いますか。
もっともこれは、後者の情報量の多さも関連するでしょうから、
好みの問題かも知れません。

こういうのを読んでいて時折思うのが、
「他の古典言語はどのように勉強しているのか」ということ。
西洋古典学であればラテン語は必須ですし、
インド古典学であればサンスクリットが不可欠。
我々の漢文と同じです。
やっぱり、日々読みまくるしかないのでしょうかねぇ。
それぞれの古典学が持つ古典語勉強法を比較すると、
新しい何かが見えてきたりはしないものなのかな…と。

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ガーバー『イスラームの国家・社会・法』

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ハイム・バーガー『イスラームの国家・社会・法 法の歴史人類学』、

黒田壽郎訳・解説、藤原書店、1996年

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「サブタイトルに『法の歴史人類学』と書いているのに

法学や歴史人類学でなく思想史にカテゴライズされてるのは

どういうことだ?!」

と文句を言われそうですが…。

読むに、イスラム教という宗教の持つ価値観、

或いはそこから生まれた諸々の法規が

実際の社会においてどのように運用され、

もしくはその運用の結果、人々がどう思惟し

生活がどう営まれていたのか、

ということを垣間見る事ができた内容を考えると、

むしろ思想史と言って良いのではなかろうか、と考えています。

よって、ここでは思想史でカテゴライズ。

上で「生活がどう営まれていたのか垣間見た」と書きましたが、

それは同書のメインストリームではなく

(それが為に垣間見るに過ぎないわけですが)

近世イスラーム社会、同書での舞台はオスマン帝国、において

「法」と認めうる代物が如何に存在し機能したか、

が骨子となります。

マックス・ウェーバーやサイードなど他の碩学の理論が、

踏襲はされないまでもどこか意識されているところもあるので

社会学の知識を身に着けていると

更に面白く読めるのかも知れませんね。

ともあれ、未踏のイスラーム社会について

良い勉強ができたのは事実です。

黒田氏の解説も大変参考になります。

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桂正和『ZETMAN』

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桂正和『ZETMAN』(YJ COMICS)、集英社、第8巻まで、連載中
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桂正和氏といえば、はるか四半世紀ほど前に、

(1)『ツバサ』でデビュー、『WINGMAN』、その後『ヴァンダー』を経て
(2)『電影少女』『I's』などを書かれているので、
※『SHADOW LADY』はどちらに含めるべきだろうか。
未読なので判断不可※

最近の方々は(2)の路線でご存知の方が多いように思います。
が、倭儒は(2)の路線が大嫌いですので、
同氏のこの路線は全く読まず。
大事なのは(1)路線だと思っています。

(1)路線のモチーフは「正義への問いかけ」。
端的には「正義とは何か」です。
『ヴァンダー』は『WINGMAN』と同じ語りなので、
同氏の問いかけとしては、『WINGMAN』『ZETMAN』の二つが
メインストリームだと解釈しています。

『ZETMAN』の初出は平成元年=1984年、読み切りにて。
『ZETMAN 桂正和短編集』の冒頭に載せられています。
※『SHADOW LADY』もこちらが初出のようです※

その後、2002年に連載開始。
んー、18年の時を隔てていますねぇ。
実はこの短編を目にしたときから
同作品の連載を心待ちにしておりました。
待ちまくりです。
※その間、(2)系列&『SHADOW LADY』が出ていましたが、
ずーっとイライラしていたわけです※

短編から連載に移ったため、
世界設定等は大幅なリメイクないしボリュームアップが
為されてはいるものの、
モチーフ「正義への問いかけ」は
些かも揺らいでおりません。
むしろ、短編当初に比して
「回答例」をいくつも出せる状況にあるので、
読者にとっては比較もできて更に分かりやすくなり
読み応えも増しています。

唯一の欠点は…YJCだからなのか、一冊あたりがやや高額…。
なぜに\680(税込)なのか…装丁凝り過ぎです。
普通のJCなら\400程度なのに(ToT)

でも、現代にこそ在って良いこの問いかけ、
それへの回答を試みる同氏の挑戦を見守りつつ
引き続き楽しみます。

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幣原坦『韓国政争志』

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幣原坦『韓国政争志』、三省堂書店、1907年

(『韓国政争志・韓国警察統計』(韓国併合史研究資料21)、

龍渓書舎、1996年復刻に所収)

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ちょうど100年前に発行されたものの復刊。

倭儒が手にしたのは()内の復刻版です。

政争史といっても現代韓国のそれではなく、

朝鮮王朝(李朝)期に発生した儒者官僚の党争を指します。

同書で扱うのは東西分党と老少分党。

ものすごくざっくり言うと、

東西分党は17世紀前半に発生した、李退渓派と李栗谷派への分裂。

老少分党は17世紀後半に起こった、宋時烈派と尹拯派への分裂。

実際には、著者も述べている如く、こう単純ではないので

人間関係が脳内で錯綜しないようにするのが大変…。

でも、朝鮮儒教を読み解くに当たって避けられない要素なので

頑張るしかないですねぇ(苦笑)

古いものではありますが、党争理解の手助けにはなると思います。

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廣野由美子『批評理論入門』

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廣野由美子『批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義』(中公新書1790)、

中央公論新社、2005年

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あとがきによると、

「小説の仕組みと読み方を示すことによって、

小説とは何かという根本的な問題について考えることが、

本書のそもそものねらいだった」そうです。

文学のディシプリンを真っ当に積んでいない倭儒にとって、

しかし同書は、小説を題材として文学研究なるものを示してくれた

非常にありがたいものであるということができます。

文学専攻として長らく研鑽を積んでこられた方には

物足りない可能性もあるのでしょうが、

全2部構成、「小説技法篇」と「批評理論篇」というスッキリしたもの。

しかも著者の言うように第一部「小説技法篇」もまた、

小説技法を切り口にした批評が可能である以上、

批評理論篇の一部たりえると考えることもできます。

題材は、サブタイトルにあるように、『フランケンシュタイン』。

あの怪物の話です。したがって、題材もイメージしやすい。

英文学を題材にした本ですが、

国文でも朝文でも、というよりどの文学を専攻されようとする方でも

関係無く好著として読めるのではないかな、と思います。

ここから、より深く専門的に学ばれると良いのでしょうね、きっと。

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川原寿市『儀礼釋攷』第1冊

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川原寿市『儀礼釋攷』第1冊(解説篇)、朋友書店、1973年

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全15冊。

全部読んでから書くには些か(けっこう?)多い冊数なので

1冊読み終えるごとに記録することにしました。

第1冊は「解説篇」という名の示すとおり、

著者川原寿市氏による中国礼学・礼学史の解説。

ここまでの理解が無いと礼学は研究できないものか…と嘆息。

ちなみに礼学とは儒教の一分野です。

川原氏は、解説の自序や、

碩学小島祐馬先生から序文を贈られていることから、

京都大学派であることが伺えます。

倭儒がこの『儀礼釋攷』を知ったのは、

修士課程の恩師によって御教示を受けたからです。

今回、第一冊を読み終えたのは、

通巻で読了しようという意図から。

それまでも自身の関心を中心に読んではきたものの、

通巻で読めばまた異なる発見があるだろうと思い、

着手したわけです。

礼に関する議論は、

中国においても、時期によって違いがあるとはいえ、

喧しく行なわれていますが、

朝鮮王朝時代においても苛烈な論議が行なわれてきました。

朝鮮の場合、礼論が政争の道具と化していましたので、尚更です。

そういう議論のための議論、という側面は別にしても、

礼とは人間の誠意を如何に表現し尽くすか、

その為の身体技法という側面を持ちます。

議論が費やされたということの示す意味を考えたとき、

その面白さに惹かれてしまったわけです。

しかし、この知識量は…超膨大である事を要します。

いずれ池田末利先生の『儀礼』(東海大学出版会)も

比較する必要があるのでしょうが、

『儀礼釋攷』を見るだけで、その壁の高さに圧倒されてしまいます。

時折、「学問の斯くの如き深さ」ゆえ、途方に暮れます。

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サイモン・シン『フェルマーの最終定理』

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サイモン・シン『フェルマーの最終定理 ピュタゴラスに始まりワイルズが証明するまで』、

青木薫訳、新潮社、2000年(新潮文庫版、2006年)

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この前の原稿を書いているときから

「今の原稿が終わったら絶対読んでやる!」と、

妙な意気込みを持ち続けていましたので、

とうとう読めた…というのが正直なところでしょうか。

端的には、
「フェルマーの最終定理」と称される数式を、
20世紀末にある数学者が証明するまでの、数学史(数論史)
ということができます。

フェルマーの最終定理は、
ピタゴラスの三平方の定理が理解できれば
理解できる、非常に簡単なものです。

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X(n)+Y(n)=Z(n) ※(n)はべき数=n乗、ということ
n>2という条件を満たす整数の組(X,Y,Z)は存在しない
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X(2)+Y(2)=Z(2)
であれば、例えば、X=3/Y=4/Z=5という条件において成立します。
これが世に言うピタゴラス「三平方の定理」です。

内容は実見していただくとして、
簡単に感想(書評ではありません)を書くと…、

・一気に読めます
・面白いです
・数学の知識は必要としません(あれば補遺も楽しめます)
・一般に、学問の形成、或いは学問という営為(及びその意義)を
実にうまく表現できている
・学問が如何にして存在するか理解できる
・訳も良い

こんな感じでしょうか。
倭儒などはここに現われる数学者たちの熱き戦いを見ていると
「朝鮮儒者が儒礼の議論に全身全霊を傾ける姿」と
ダブって見えてしまいます。
共通点は、「真理」なるものの探求。

総じて、非常に読みやすく、良い本でした。
評判どおり(以上かな?)です。
中学・高校時代に「証明問題、命!」だったころの
無邪気な気持ちを思い出しました(^^)

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ボルスト『中世ヨーロッパ生活誌』

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オットー・ボルスト『中世ヨーロッパ生活誌』全2巻、

白水社、1985年

原著:Otto Borst "Alltagsleben im Mittelalter"

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原著は読んでいません、念のため。

倭儒はドイツ語を読むことができませんので、あしからず。

実はこの本、第1巻は今年の初めに読み終わっていました。

が、その後、学会発表や論文投稿の準備に追われ、

第2巻に手をつける(主に心の)余裕が全くありませんでした。

そんなわけで長らく保留状態にあった本です。

ようやく読み終わって気分爽快(笑)

感想としては…原著と比較していないのですが、

どうも、事実の羅列に近い書き方になっているという印象。

内容自体は興味深い事が散りばめられていて、

決して悪い内容ではないのに。

「原書には各章ごとに文献がついているが、

あまりに専門的にすぎるので」割愛したとのこと。

注はこの中に含まれないのでしょうか。

原著が専門書であるのを読みやすくするための

訳者の先生方の苦労がしのばれる一方、

内容が事実の羅列になっている感を覚えてしまう点に疑問も。

自身の読みの浅さが原因なのかも知れません。

書いている事は興味深い物が多いので、

うまく拾い読みできると楽しく読めると思います。

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兵藤裕己『太平記〈よみ〉の可能性』

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兵藤裕己『太平記〈読み〉の可能性 歴史という物語

(講談社選書メチエ61)、講談社、1995年

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久々の読後文です。

ここに挙げられそうなのがようやく出てきました。

率直に言って、著者の「デキル」感覚が新鮮でした。

特に前半。

学歴を見るに、京大→東大院。帝大系ですね。

御専攻は国文学です。

調べてみると、1996年にサントリー学芸賞を受賞した

作品であることが判明。

選書メチエ版は品切れですが、2年前つまり2005年に

講談社学術文庫版で再販されたそうです。おかげで購入可能。

引用箇所のコピーをとるときはメチエ版のほうが

大きくて使いやすいため、

古本を探すか、それとも素直に文庫版を買うか、

少し悩むところです。

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池田亀鑑『古典学入門』

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池田亀鑑『古典学入門』(岩波文庫青184-1)、岩波書店、1991年

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もともとは同氏の

『古典の読み方』(学生教養新書)、至文堂

として刊行されていたもの。

それ(1952年刊)を定本として再刊したのが本書。

夜、就寝前に少しずつ読んでいたものを

ようやく読了しました。

大学の教養課程在籍者向けに書かれたと思しき一冊で、

書き方は至って平易です。

しかし、平易な文体の中に込められた内容は

決して生易しいものではなく、

倭儒の如き凡人が一読で全てを理解できる水準ではありません。

「言いたいことが何となく分かる」程度では

理解と言わないのです。

それは、「その気になっている」だけだと思っています。

既に半世紀以上の時を遡る頃の出版物が原本ですけど、

内容から言えば、まだまだ現役の座を降りることの無い書籍。

時間を置いて読み直し、考え直したい内容です。

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卞宰洙『朝鮮文学史』

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卞宰洙『朝鮮文学史』、青木書店、1985年

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次の仕事の関係で読んだ一冊。

もともと思想史専攻の倭儒にとって

文学領域は隣接エリアなので

チェックしておく必要があるにも拘らず

それに至らなかった分野。

今回、その意味で良い仕事をさせて頂いていると思います。

簡単な所感だけ(いつものことですが)言うと、

22年前の本であるということはひとまず保留しても、

「革命の正統性」ないし「民意の醸成」といった、

某国の革命及び存在の正当性の主張に結びつきやすい

論調が少し鼻につきます。

しかし、全体としてはまとまった隣国の文学史概説。

ここに含まれる「主張」が、

著者の意図により含まれたのか、もしくは

著者自身が経た教育の過程で刷り込まれた「教養」が

著者をして無意識に混入させてしまったものなのか、

倭儒では判別できません。

ですが、古典文学中心でまとめられているので、

古典関係の倭儒にはとてもありがたい一冊です。

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奈良本辰也『日本近世の思想と文化』

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奈良本辰也『日本近世の思想と文化』、岩波書店、1978年

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俗に言う京大学派。奈良本辰也氏の旧稿を集められたもの。

文章は平易で読みやすく、概説的ではあるものの

読者の力量に応じて答えを返してくれそうな奥行きを感じます。

この奥行きこそ著者の力量なんでしょうね。

んー、斯く在りたいものです。

全体として、やや記述が重複している点は

人によっては気になるところかもしれません。

しかし、逆に見れば、そのフレーズこそ

著者の主張ともその重点とも採れるわけで。

ともあれ、古典への深い造詣が見て取れます。

さすがですよね…ホント。

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柳成龍『懲毖録』

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柳成龍(朴鐘明訳)『懲毖録』(平凡社東洋文庫357)、平凡社、1979年

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言わずと知れた、いや、知る人ぞ知る?

『懲毖録』(チョウヒロク)。

文禄・慶長の役(壬辰・丁酉倭乱)について、

当時の朝鮮儒者、西厓・柳成龍の記したもの。

近世日本の知識人にも読まれた著述です。

平凡社は昔から良いものを出してますね。

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高橋繁行『葬祭の日本史』

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高橋繁行『葬祭の日本史』(講談社現代新書1724)、講談社、2004年

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お盆が近づいてきたから、というわけではないのですが、

読んでみました。

「日本史」とタイトルにあるように

史的な内容もあるにはあるのですが、概ね半分程度。

新書の半分なので概説にとどまりますが、

内容としては割と面白いです。

残り半分は現代の葬儀事業や最先端の葬儀関連サービスなど。

こちらも興味深い内容でした。

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金谷治訳注『大学・中庸』

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金谷治訳注『大学・中庸』(岩波文庫青222-1)、岩波書店、2006年12刷(1998年初刷)

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電車の中でいつもこのような基礎文献を読んでいます。

『大学・中庸』は言わずと知れた、四書の半分。

『礼記』から「大学」・「中庸」両編を抜粋したものです。

本書ではこの両編が一冊にまとめられています。

原文に訓読文、そして

手堅く分かり易い平易な文体で現代語訳が掲載。

やはり論孟(論語・孟子)よりは学庸(大学・中庸)が好きです。

一応、礼学系統を主軸に研究しているものですから。

『孟子』はどうも…「俺様は斯く語りき」というか、

自己主張が強く感じられるので今ひとつ好きになれません。

今、読んでますがf(^_^;;)

錯覚かなぁ…。

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高橋文博『近世の死生観』

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高橋文博『近世の死生観 徳川前期儒教と仏教』、ぺりかん社、2006年5月

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ソウルへ行く前から借りており、読みたかった一冊。

昨日の体調不良を幸いに、早速読みました。

季節柄、というわけではありませんが

日本社会における儒教のあり方を考える際に有用な一冊だと思います。

日本の場合、朝鮮と異なり儒礼教化政策が行われたわけではありません。

しかし、そのような状況の下、

日本の儒者たちもまた『文公家礼』を紐解き、

死の儀礼(喪葬・祭祀)を牛耳られていた仏教と対峙しておりました。

また、第二部においては中江藤樹に焦点を当て、

その死後観のみならず民衆教化の側面にも視野を広げておられます。

今回は図書館で借りたのですが、折を見て購入を考えたい一冊です。

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江上照彦『悪名の論理』

江上照彦『悪名の論理 田沼意次の生涯』(中公新書187)、中央公論社

現在進行中の仕事の関係上、

このあたりの本や論文を読み漁っています。

うちの大学の図書館には無かったので

公立図書館から借りました。

どうやら西洋文学研究者の方が書いた本のようです。

しかし、それだからこそ分野の常識に捉われず

書くことが出来たのかも。

一橋治済の話は初見だったし。

典拠となる原典資料をもう少し明示してくれれば

なお良かったかと思います。

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永渕康之『バリ島』

事務方に追われて時間が惜しいのですけど、

来週に使うということで、已む無く読破。

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永渕康之『バリ島』(講談社現代新書1395)、講談社、1998年

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バリ島には行ったことも無く、調べたことも無いので

述べられることは余りありません。

ただ、二つの世界大戦というものが

現代社会に及ぼしている影響は、

単に植民地支配という政治面にとどまらず

多くの面に表れているのだ、というところでしょうか。

もう少し落ち着いた時期に読みたかったとは思います。

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本橋哲也『ポストコロニアニズム』

本橋哲也『ポストコロニアニズム』(岩波新書)、2005年、岩波書店

※戦後問題関連の本はあまり読まないのですが、

今回は必要に駆られて読了。

「証言」の重要性は認められて然るべきですが、

使い方が難しいのもまた事実ですねぇ。

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大石慎三郎『田沼意次の時代』

大石慎三郎『田沼意次の時代』、岩波書店、1991年

岩波現代文庫版で復活しているようですね。

資料批判の段階から分かり易くまとまっています。

文庫版、欲しいですね。

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崔官『文禄・慶長の役』

崔官『文禄・慶長の役[壬辰・丁酉倭乱] 文学に刻まれた戦争』(講談社選書メチエ22)、

講談社、1994年7月

最終的には文学的視座に落ち着くものの歴史記述が相当多いので、

倭儒は歴史研究の書物として堪能致しました。

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藤田覚『松平定信』

藤田覚『松平定信(副題:政治改革に挑んだ老中)』(中公新書1142)、中央公論社、1993年

※出版社名は奥付どおりに表記しています。

中央公論社さんは1999年以降、中央公論新社さんに社名変更されております。

詳細は同社サイトを御参照のこと。

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ゴンチャロフ(米川正夫訳)『オブローモフ』

ゴンチャロフ作、米川正夫訳『オブローモフ』全三冊(岩波文庫)、岩波書店、1976年

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吉川幸次郎校訂『論語』

吉川幸次郎校訂『論語』上下巻(朝日選書1001)、朝日新聞社、1996年

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菅野則子『江戸時代の孝行者』

菅野則子『江戸時代の孝行者―「孝義録」の世界』(歴史文化ライブラリー73)、大修館書店、1999年

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早瀬晋三『歴史研究と地域研究』

早瀬晋三『歴史研究と地域研究―フィリピン史で論文を書くとき』、法政大学出版局、2004年

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