読了―マンガ・小説

読了―マンガ・小説

キム・サンホン『チャングム』

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キム・サンホン(米津篤八訳)『チャングム』全3巻、

(ハヤカワ文庫)、早川書房、2004年~2005年

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ドラマで有名な「宮廷女官チャングムの誓い」として

NHKで放送されたものの原作…という認識で

良いのでしょうか…。

ドラマには甚だ疎い上に

訳者解説にも明示されていないので

何とも言えませんが(*_*)

ともあれ、原作名は『医女 大長今』。

原著者はKim Sang-heon氏。2003年に刊行。

燕山君代から中宗代、つまり15世紀末から16世紀前半が

舞台となる時代です。ちなみに、その頃の日本は室町時代。

解説によると、歴史事実として実在が確認される女性、

大長今(テ・チャングム)の記事をもとに

著者が再構成されたとのこと。

典拠は『中宗実録』だとか。

燕山君代の暴政や中宗反正の話、

また医書や手術、漢方(現代韓国では「韓方」)、

更に当時の職位など、朝鮮古典世界を垣間見るのに

有用な内容が豊富です。

※あくまでも「垣間見る」或いは「雰囲気を味わう」程度。

基本、娯楽ですからね。

本気で当時の様相を知ろうとする場合は、

『朝鮮王朝実録』や儒者の個人文集などの

原典を確認する必要があります。念のため注意※

というわけで、息抜きしたいけれど勉強もしなければ…、

と追い詰められているときに

ちょっと口実を自分に作りながら(笑)読める作品です。

作品として、個人的見解としては、面白かったですよ。

DVDを借りたくなりました。

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尹仁完・梁慶一『新暗行御史』

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尹仁完・梁慶一『新暗行御史』全17巻・外伝1巻(SUNDAY GX COMICS)、

小学館、2001~2007年

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少し前に完結したばかりの同著。

朝鮮学に関わるものであれば御馴染みの「暗行御史」がモチーフ。

暗行御史:Am-haeng Eo-sa/암행어사。

御史は中国の御史大夫に由来する名称。

暗行は、暗に(ひそかに)行する(いく・おこなう)といったところでしょうか。

日本のモチーフでは水戸黄門がよく並べられます。

共通点は、

・正体を隠して全国を行脚

・行く先々の悪政を暴く

・最後は印籠/馬牌を出して、正体を明かし裁定

といったところでしょうか。

ただ、歴史上の実在如何は別にしても、

水戸黄門は徳川光圀、つまり徳川御三家出身。

朝鮮王朝でいうと、宗族(王族)です。

暗行御史は官僚(文官)ですからねぇ。

したがって人数も違うし、何より、主従の差が…。

倭儒としては、全国行脚という点は異なりますが、

同じく時代劇の「大江戸操作網」で設けられた隠密同心のほうが

イメージに近いような気もします。

ウィキペディア「大江戸操作網」によりますと、

隠密同心は時の老中、松平定信によって設けられた極秘組織で、

普段は江戸町内で町人として暮らし、

諸悪を探索し、治安を維持する役柄です。

時代劇ですので当然、立ち回りもあります。

松平定信と言えば、寛政の改革を主導した人物。

18世紀末に活躍しております。

寛政異学の禁や出版物規制といった庶民教化政策も施行していますので、

隠密同心制度も何か元ネタがあったのかも知れません。

※水戸黄門の全国行脚も事実と一致しないですし※

ちょっと調べてみようと思います。隠密同心。

閑話休題。

まだ最終回を迎えて間もないため、ネタバレの話はできません。

代わりに、というか朝鮮儒教の伝統が垣間見られる点を二つご紹介。

(1)とあるシーンで、蘇った先祖に対して主役の言った台詞の趣旨:

「お供え物が足りなかったから現世に蘇ったのか?」

(2)世界背景において「敵」に為された設定:

「敵」は、人間がいなくては自存できない

(1)は、チェサ、つまり祖先祭祀にまつわるネタ。

(2)は、人間の心に関係する考え方。

前者は礼・鬼神、後者は性善説・性悪説の問題と表現できます。

この二点において、

「あぁ、韓国だなぁ。朝鮮儒教だなぁ。」と発想に感心し、

ニヤリと笑ってしまったのでした。

もちろん、ストーリーも好きですよ。

日本では稀有な、韓国古典モチーフを用いた、

しかも韓国で出たものを後から翻訳したものではないマンガです。

日本の作家さんで韓国古典モチーフのマンガは、

皇さつきさんの『李朝暗行記』と

CLAMPさんの『新・春香伝』、

あと、司敬『沙也可』が思いつきます。

んー、ほとんど暗行御史もの…。

『沙也可』は秀吉の朝鮮出兵が元ネタですけど。

そろそろ暗行御史以外のモチーフが用いられても

良いと思うんですけどね。

せっかく『新暗行御史』で多くの韓国古典が

ストーリーごとのモチーフとして登場したわけですから。

今後のマンガに注目しましょう。

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